緑内障 Glaucoma
院長の専門分野
緑内障とは、視神経や網膜神経の障害に伴う視野異常を特徴とし、40歳以上の5.8%が罹患(多治見スタディ)し、我が国の失明原因の第1位、中途失明原因の第2位である、非常に重要な疾患です。病気が進行すると視野が狭くなっていきますが、自覚症状が現れにくい病気でもあり、気づいた時には、もうかなり進行しているということもあります。眼球の内圧(眼圧)を十分に下降させることで進行抑制が期待できるため、早期に診断を受けることが重要な病気です。一度失った視野を取り戻すことができない病気ですので、40歳を超えたら、定期的に眼圧検査・眼底検査・視野検査などの検査することをお勧めします。
眼圧の重要性
正常値は10-21mmHgといわれています。しかし、適切な眼圧(視野が進行しない眼圧)は1人1人異なります。緑内障が疑わしい場合、数回の測定によって眼圧が普段どの程度なのかを知り(基準眼圧)、点眼薬を使ってどの程度値が変わったのか、その眼圧で視野欠損が進行していかないかどうかを確認していくことが大切です。
健康診断で「視神経乳頭陥凹拡大」
眼科検診における緑内障のチェックとして、我々は目の奥にある視神経の入り口(視神経乳頭)を確認しています。正常な視神経乳頭と比べると、緑内障がある方の視神経乳頭は陥凹(へこみ)が大きく、輪郭がいびつになっていることが多いためです。
そのため、視神経乳頭陥凹拡大がみられたり、眼圧が高い場合には、視野検査を受けていただくようご案内させていただきます。
また、神経繊維の薄さ(眼底検査やOCTによる評価)、目の排水溝である隅角検査も緑内障を診断する上で重要です。
開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障
緑内障は大きく2つに分類されます。排水溝が存在する隅角が閉塞していない開放隅角緑内障と、隅角が物理的に閉塞してしまっている閉塞隅角緑内障です。特に後者においては、急性緑内障発作という、急激に隅角が閉塞することで房水の流れが悪くなるために眼圧上昇を来し、頭痛や嘔気などの激烈な症状や、急速な視神経線維の障害、対応部位の視野障害を来す場合があり厳重な経過観察またはレーザー治療が必要となることもあります。
緑内障患者さんが使用してはいけない薬
緑内障治療をしている患者様から、「使ってはいけない薬はありますか?」と聞かれる事がよくあります。確かに、内視鏡検査をする際などに使われる鎮静剤や、抗うつ薬、抗不安薬など、緑内障のある方が使用する際に注意が必要な薬剤はいくつか存在します。ただ、ここで話題となっている緑内障は閉塞隅角緑内障と呼ばれるものであり、全ての緑内障患者が対象となるわけではありません。
治療
緑内障の治療は、眼圧を下げることが基本です。その方の基準となる眼圧(治療開始時)より約30%下降させることが理想的と言われています。
点眼薬
眼内には『房⽔』という透明な液体が循環しており、⾓膜と虹彩(茶⽬)が形成するスペースは前房と呼ばれ、その境には線維柱帯という房⽔の排出溝(隅⾓)が存在します。排水経路には、この線維柱帯から眼外の血管へ流出していく主流出路と、虹彩の根部から毛様体の筋組織の間を通って眼外に流出する副流出路が存在します。房水の約90%は主流出路から、残りの10%は副流出路から流出すると考えられています。
緑内障治療の主軸となる点眼薬には多くの種類があります。主流出路や副流出路から房水の流出を促進するタイプと、房水産生機能を抑制するタイプが存在するだけでなく、それぞれの作用機序によってさらに細かく分類されます。
様々な点眼薬を組み合わせていくことで、その方にとっての適切な眼圧まで値を下げてあげることが治療の目標です。患者様に合わせた点眼薬の組み合わせを一緒に探していくことが大切なのです。
レーザー治療、観血的手術
緑内障治療は点眼が基本ですが、点眼治療でも眼圧が充分に下がらない場合は、レーザー治療や観血的手術が必要な場合があります。詳細は「緑内障手術 Glaucoma Surgery」のページをご参照ください。